越境EC事業者が押さえておくべき法律の話│トラブル発生時の対処法も解説

越境EC事業者が押さえておくべき法律の話│トラブル発生時の対処法も解説

コロナ禍を受けて世界中で巣ごもり消費が盛んになっており、各国では国内ECのみならず、越境ECの利用も拡大中です。

そこで販路拡大のために、越境ECをはじめようと考えている企業も多いでしょう。しかし、その際に問題になりがちなのが法律です。

本記事では、日本の事業者が海外在住者へ商品を売る際に押さえておくべき法律について解説していきます。

越境ECにはどんな法律的リスクがある?

国境を超えての取引となるため、越境ECでは特有の問題が発生します。

例えば、

・日本法の適用の有無
・トラブル発生時の解決方法
・商標権
・現地の法規制
etc.

ほかには、商品の破損や不着、クレジットカード不正利用などのリスクも付きまといます。

もし何らかのトラブルが起きた場合、通常は利用規約に則り、必要に応じて返金や交換などを行います。ただ、これで解決しないケースもあり、そうなると裁判です。

このとき、消費者はどの国の裁判所で訴訟を起こすのでしょうか。この点がややこしいので、次項で詳しく解説しますね。

越境ECでは管轄裁判所はどこの国になる?

トラブルの裁定を管轄する裁判所は、越境ECの場合はどこの国になるのか。

日本国内においては、民事訴訟法にて以下のルールが定められています。

「当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる。(民事訴訟法第三条の七第3項)」

つまり、ショップ側は直轄裁判所を日本にすると決められるのです。直轄裁判所の情報は、利用規約に必ず明記しておきましょう。

とはいえ、合意があったとしても、所定の直轄裁判所で裁判ができるとは限りません。国によっては、日本ではなく消費者自身の住む国の裁判所へ訴えることを認めているためです。ショップの定めた利用規約に関係なく、日本以外での裁判となる可能性があります。

では、利用規約に管轄裁判所を記す意味はないのかというと、実はそうではありません。

「管轄裁判所は日本とする」旨を記載しておくと、規約どおりに日本の裁判所へ訴訟を起こしたり、あるいは訴訟そのものを諦めたりする可能性が高まるからです。

一定の効果は期待できるので、やはり利用規約にはハッキリと記載しておくべきでしょう。そして、外国で訴訟を起こされたときのための対策も準備しておくのが大切です。

トラブル発生時、越境ECではどこの国の法律が適用される?

管轄裁判所のほかに、どの国の法律を基準にするかというのもあります。この際に基準となる法律を「準拠法」と呼びます。

通則法7・8条により、基本的に準拠法は日本の法律です。契約の際に取り決めていなかったとしてもこうなりますし、利用規約には「準拠法は日本法とする」と記載するのが通例です。

よって日本で訴訟が起こされた場合には、原則として日本法が準拠法になります。

しかし、外国で訴訟が起こされた場合、準拠法がどうなるかはその国次第です。日本法になるケースも、訴訟が起こされた国の法律になるケースもあり得ます。

さらに消費者保護の観点から、通則法11条には「消費者契約の特例」が定められています。ここでは、準拠法が決められていたとしても、消費者が自分の住む国の法律にある強行規定(当事者同士の合意の有無にかかわらず強制的に適用される規定)を適用するよう求めたら、その強行規定が適用されてしまうのです。

こうなると、ショップ側は、いつの間にか外国の法律を基準に裁判へ突入することになります。

以上のとおり、準拠法でも必ず日本のものになるとは限りません。ただし、利用規約には必ず決め事を明記しておきましょう。

越境ECにまつわる法律│資金決済法にも注意しよう

決済に関する法律である資金決済法にも注意が必要です。

銀行以外の企業が為替取引をする場合、この法律に基づき、資金移動業として内閣総理大臣へ登録しなければなりません。無登録で業務を行うと、懲役や罰金が科せられます。

そして、越境ECではまさに為替取引を行うため、この法律が関わってくるのです。

越境ECモールを利用するのであれば、モール運営がこの業務を代行してくれるため問題ありません。一方、自社ECだと登録しないと資金決済法に引っかかります。

が、この登録をパスするには煩雑な要件を満たさなければならず、実際のところ難しいです。

そこで有効なのが、決済代行(収納代行)を利用すること。資金移動業の部分だけを代行するサービスで、上述の登録を避けることができます。

決済業務の手間を削減できるといったメリットもありますし、自社に合った業者選びをしていただければと思います。

越境ECの法律は専門家に相談を

ここまでお話してきたように、管轄裁判所や準拠法に関しては自社の主張が通らない可能性があります。

消費者の住む国の法律も影響するので、事業計画を立てる際には現地の法律にも精通した専門家へ相談しましょう。

上記以外でも、現地には輸出できない商品や現地では禁止されている売り方、ユーザー情報の取り扱い方などに関する法律が各国で定められています。

法律を遵守してこそのビジネスなので、不注意がないよう気をつけましょう。

まとめ

今回は、越境EC担当者が押さえておきたい法律について解説してきました。

法律はややこしいです。「これはこう!」というのを言いにくいため、難しい判断はやはり専門家に任せるのがおすすめです。

また、トラブルそのものが起きないように、サイトのセキュリティを強化したり、配送業者をよく吟味したりといった対策も重要です。

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