近年、テクノロジーの発展とともにECにも新しい形態が登場しています。その一つが動画コマースで、文字通り商品紹介に動画を活用するというもの。
YouTubeをはじめとして、動画コンテンツは日常のいろいろな場面で利用されていますよね。ECにも、その波が訪れているのです。
本記事では動画コマースについて、その概要や市場規模、メリット、注意点などを解説していきます。
動画コマースとは?
動画コマースとは、ECの商品紹介に動画を取り入れた手法を指します。ビデオコマース、Vコマースとも。
動画から商品を直接購入できるのが大きな特徴で、他サイトへの遷移が生じない分、離脱率を抑えられます。
動画コマースがよく活用されているのはアパレルや化粧品、食品など。画像や文章に比べて具体的なイメージを持ってもらいやすいため、こうしたジャンルとは特に相性が良いといえます。
ライブコマースとの違いは?
動画コマースと同じく近年盛り上がりつつあるのがライブコマース。
こちらはライブということで、録画した映像ではなく生放送を利用します。顧客からの質問などへリアルタイムに返答できるといったライブ特有のメリットがある反面、視聴時間が固定されている等のデメリットも。
動画コマースとは目的に合わせて使い分けるのが肝要です。
動画コマースのメリット
次に、動画コマースのメリットをみていきましょう。
画像や文章よりも多くの情報を提供できる
1つめは、画像や文章よりも多くの情報を提供できること。
一般的に、動画は画像の5,000倍の情報量といわれます。全体のフォルムやサイズ感といったカタログスペック的な解説だけでなく、製作者へのインタビューやお客様の声などに至るまで、文章のみでは伝えにくい点まで詳細に紹介できます。
具体的な商品イメージを持ってもらいやすい
2つめは、具体的な商品イメージを持ってもらいやすいこと。
実際に使っている様子やその感想なども動画に盛り込むと、「実際はどうなんだろう?」という顧客の大きな疑問を解消しやすくなります。「思っていたのと違う……」といったズレも減らせるでしょう。
動画から商品を直接購入できる
3つめは、動画から商品を直接購入できること。LPや別サイトへ遷移することなく、動画上で買い物が完結するのです。
ページ遷移が伴うと、そこで顧客の離脱が少なからず発生します。動画コマースはこの点を解決でき、離脱率低下とともにCV増加が見込めるでしょう。
時間や場所を選ばず視聴してもらえる
4つめは、時間や場所を選ばず視聴してもらえること。
できあがった動画を動画サイトやサーバーへアップしておけば、顧客は自由に閲覧できます。地方在住の顧客にとっても、実店舗へ足を運ぶ必要がなくなり、気軽に買い物を楽しめるようになります。
動画コマースの注意点
動画コマースにも、もちろんデメリットは存在します。どんなものがあるのかみていきましょう。
動画制作に時間と手間がかかる
動画制作には、かなりの時間と手間がかかります。
現在ではスマホでも高クオリティの映像制作が可能ですが、十数秒程度のショートムービーでも、企画・撮影・編集となると初心者の方にとっては負担になるでしょう。場合によっては、ほかの業務に手がつけられなくなるほど。
どういう体制で制作していくのか、社内リソースと慎重に相談しなければなりません。
効果測定の方法
効果測定の方法にも注意してください。
動画の再生回数はKPIの一つとして有効ですが、これだけだと、どの時点まで視聴されたかを把握できません。なので、平均視聴時間や再生完了率なども追うようにしましょう。
加えて、視聴者が動画から購入したか分かるようにもしておく必要があります。
これらの数字をチェックし、必要に応じて動画のブラッシュアップを重ねていくわけですね。
動画コマースの事例
ここからは、動画コマースの事例を2つ紹介していきます。
ニトリ ウチソト
ニトリが運営する「ニトリ ウチソト」は、アウトドア・ガーデニング用品を紹介する動画コマースサイトです。実際に商品を使っている様子を動画に収めており、顧客のイメージと購買意欲を同時に膨らませられます。
ウチソトでは「TIG」と呼ばれる次世代動画技術を導入。動画内で気になったアイテムをクリックまたはタップすると、そのアイテム情報をストックできます。そして、ストックした商品のアイコンを押すとニトリ通販サイトへジャンプし、より詳細な商品情報を確認できるとともに購入も可能です。
「これ何だろう?」と思った商品を片っ端からストックできるため、従来のECサイトのようにカテゴリごとにいちいち探し回る必要がないのは便利ですね。
藤巻百貨店
「藤巻百貨店」は、上質な日本のアパレルや日用品、食品などを取り扱うECサイトです。ここでは、商品のストーリーや使い方、製作者の思いなどを紹介する動画を各商品ページに埋め込んであります。
これにより、商品イメージのズレを防げるだけでなく、商品や作り手のファン化も図ることができ、単なるCV率アップのみならずリピート購入にまでつなげられるのです。
まとめ
今回は動画コマースについて、概要やメリット、注意点、具体事例などを紹介してきました。
コロナ禍で外出がはばかられ、5Gも登場してきた昨今の時勢を考えると、動画コマースはいろいろな業界で導入されるでしょう。
また、動画は幅広い世代の人々にとって日常の一部となっています。彼らのライフスタイルに適応した販売形態としても、チャレンジしてみる価値は大いにあるのです。
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