ECサイトの利益を安定させるには、リピート購入が極めて重要です。
マーケティングの世界には「1:5の法則」という、リピーター獲得コストは新規獲得コストの1/5で済むという概念があります。一度商品を購入してくれているわけですから、買ってもらえるか分からない新規の方にアプローチするよりも効率が良いのです。
では、ECサイトのリピート率は平均でどのくらいなのか?
本記事ではこの点について、業界別の目安のほか、リピート率向上のための施策などを解説していきます。自社の現状を把握する上で参考にどうぞ。
ECサイトのリピート率はどう計算する?
まずは話の大前提として、リピート率の計算方法を確認しておきましょう。
リピート率とは、全期間中の累計購入者数に占めるリピーターの割合です。計算式は以下のとおり。
【リピート率=リピート客数÷累計顧客数×100(%)】
注意すべきは、分母が累計顧客数であること。分子は一定期間の人数でも構いません。
例えば、オープンしてから9,000人の顧客が商品を購入したとします。そして、特定の月のリピート客が400人だった場合、リピート率は次のようになります。
【リピート率=400÷9,000=4.4444%】
約4.4%がリピート率というわけですね。さらに、400人のうち100人が3回目の購入だったとすると、リピート率はこのようになります。
【リピート率=100÷9,000=1.1111%】
約1.1%がリピート率です。
リピーター率とは何が違う?
リピート率と似た言葉にリピーター率というのがありますが、両者は意味合いが異なります。
リピーター率の計算式は以下のとおり。
【リピーター率=リピート客数÷特定期間の累計顧客数×100(%)】
分母が違いますね。リピーター率では期間が限定されています。
例えば、1ヶ月間の累計顧客数が1,200人で、そのうちリピート客数は300人だったとします。この場合、リピーター率は次のようになります。
【リピーター率=300÷1,200=25%】
該当月のリピーター率は25%だったことが分かりますね。
リピート率とリピーター率は混同されやすいので注意してください。
ECサイトのリピート率が重要な理由
リピート率の計算式を押さえた上で、次はリピート率が重要な理由を解説していきます。
顧客獲得コストを下げられるから
1つめは、顧客獲得コストを下げられるから。
冒頭で述べたように、マーケティングの世界には「1:5の法則」があります。リピーター獲得コストは新規獲得コストの1/5で済むという格言のようなものです。
実際、すでに商品を使った人にアプローチする方が、買ってもらえるか分からない新規の人に訴求するよりも低難度になります。これにより、予算も時間も節約できるのです。
顧客満足度の指標になるから
2つめは、顧客満足度の指標になるから。
繰り返し購入してくれる人が多い=商品やサービスへの満足度が高いといえます。では具体的にどの点が好評なのか、これを分析することで、次の施策の成功率を高められるのです。
逆にリピート率が下がっているのであれば、どこかにマズい点があるかもしれません。そこを改善すれば数字は改善されていくでしょう。
事業が安定するから
3つめは事業が安定するから。
リピート率が高まると、先の売上や利益の見通しを立てやすくなります。これによって投資の判断を下しやすくなるのです。
新規客依存だと、どうしても結果にムラができてしまいます。リピート率を上げることで、季節や時勢に左右されにくい経営を目指しましょう。
ECサイトのリピート率、平均はどのくらい?
リピート率の平均は、販売のステージや商品のジャンルによって異なります。ここでは大まかな数字を紹介しますね。
衛生用品や化粧品、健康食品、ペット用品などの消耗品
日常的に消費する物は、同じメーカーの製品を使い続けることが多いですよね。
そのためリピート率の平均も高めで、約50%になります。
購買サイクルが速いため、定期購入やポイント還元、初回モニターといった施策でリピート率を上げやすいジャンルです。
アパレル
アパレルの場合、いろいろなブランドの商品を比べて買うのが一般的です。
リピート率の平均は35%ほどですが、ブランド力が強いと50%ほどになります。
リピート率を上げるには、ブランドコンセプトに適した商品開発や会員限定セールなどが重要になってきます。
PC・家電
長期間利用する商材のリピート率は低くなりがちです。PC・家電のリピート率は25%ほど。
ただし、マウスやキーボードのような周辺機器や、加湿器のフィルターといった消耗品は買い替える頻度が高くなります。これらをクロスセルとして混ぜて、定期的に利用してもらえるようにしましょう。
購入後のフォローなしだと平均10%台
購入後のフォローなしの場合、リピート率は平均10%台になります。
顧客の大半を逃している状態ですから、何らかの施策を打って失客を防がなければなりません。
ECサイトのリピート率を上げるコツ
ここからは、ECサイトのリピート率を上げるコツを紹介していきます。
リピーター特典を用意する
1つ目は、リピーター特典を用意することです。
・リピーター限定セール開催
・ノベルティプレゼント
・ポイント2倍付与
・再購入時に使えるクーポン付与
・会員ランク制導入
・送料無料
・休眠客向けキャンペーン
などが考えられます。顧客にとってお得なことを実施しましょう。
ただ、これらによって利益が圧迫されるのは本末転倒です。自社の目標値を鑑みて検討してください。
情報発信でファンを増やす
2つめは、SNSやオウンドメディア、自社アプリなどで情報発信をして、ファンを増やすこと。
発信したい内容は、例えば以下のようなものです。
・商品の活用テクニック
・商品ジャンルに関する知識
・自分に合った商品の選び方
・メンテナンスの方法
・ブランドストーリー
・商品開発の裏話
・お客様の声
・新製品情報
・イベント、キャンペーン情報
etc.
このような、自社の商品やブランドに関する有益な情報を公開すると、だんだん読者に愛着を持ってもらえるようになります。
価格で気に入ったのではなく、商品やブランドそのものが好きな状態なので、そう簡単には他社へ流れることはありません。顧客自ら情報を拡散してくれることさえあります。
顧客と強固な関係を築ければ、一生もののお付き合いができるかもしれません。
*ECサイトでの情報発信については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひお読みください
ECサイトの情報メディア化がトレンドに?方法や事例などを紹介
データ分析
3つはデータ分析です。
商品には、リピート購入されやすい顧客層というのがあります。もちろん商品によって顧客層はさまざまなので、購入者の傾向を注意深く観察しましょう。
そして、顧客層が割り出せたら、どんな要素がリピートの決め手になっているのかを調べます。顧客に直接アンケートを取ってみるのも良いですね。
同時に、リピートに至らない顧客層も把握する必要があります。ただし、こうした顧客のために改善した結果、今までリピートしてくれていた人が離れた……という結末もありえます。
既存客の離脱を防げる範囲で、改善すべき点は改善していきましょう。
まとめ
今回はECサイトのリピート率について、その計算方法や大まかな平均、数字アップのコツなどを紹介してきました。
累計顧客数とともにリピーター数が増えていれば、顧客の満足度を高められていると判断できます。事業の現状を知る上で、リピート率は重要な指標なのです。
もっとも、リピート率は一朝一夕では上がりません。トライアンドエラーの連続で、徐々に改善していくものだというのを念頭に置いておきましょう。