さまざまなジャンルの商品を安価に仕入れられる中国輸入。日本から距離が近い分、輸送に時間がかかりにくく、近年では日本語で取引できたりと便利であるため、これから取り組んでみようと考えている事業者は多いのではないでしょうか。
その際に悩みがちなのが関税です。煩雑なイメージがあるとは思いますが、把握しておかなければなりませんよね。
それに、実は関税不要のケースもあります。
具体的にどういうことか、中国輸入にかかる関税の概要や項目などと共に解説していきます。
中国輸入にかかる関税の仕組み
まずは、中国輸入にかかる関税の仕組みを解説していきます。
ビジネス目的での輸入は「商用輸入」に分類
中国からでも他国からでも、商品を輸入する際には関税がかかります。そして、輸入目的がビジネスであれば「商用輸入」に分類されます。
一方、個人利用に限定した目的だと分類上は「個人輸入」です。個人輸入では関税が軽減されますが、実際は販売用なのに個人輸入として申告すると脱税になります。
ただし、販売を検討している商品をお試しで買ってみる場合は個人輸入になる可能性が高いです。
商用輸入時の関税額の計算式
商用輸入時の関税額の計算式は以下のとおり。
関税額=((商品代金+国際送料+保険料)×100%)×関税率
送料や保険料にも関税がかかる点に注意してください。
関税率は、商品代金と国際送料の合計で決まり、「簡易関税率」と「実行関税率」に分かれます。それぞれの税率について、以下で詳しく説明します。
①簡易関税率
簡易関税率は、商品代金+国際送料の合計が20万円以下のときに適用されます。名前のとおり簡易的な税率体系のことで、通関の迅速化のために導入されました。
品目 | 関税率 | |
1 | 酒類(1)ワイン(2)蒸留酒(3)清酒等 | (1)70円/L(2)20円/L(3)30円/L |
2 | トマトソース、氷菓、毛皮製品等 | 20% |
3 | コーヒー、茶(紅茶除く)、なめした毛皮等 | 15% |
4 | 衣類及び衣類付属品 | 10% |
5 | プラスチック製品、ガラス製品、卑金属製品、家具等 | 3% |
6 | ゴム、髪、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品 | 無税 |
7 | その他 | 5% |
簡易関税率の場合、品目は7つに区分されるのみというシンプルさ。分かりやすくて良いですね。
ただし、以下のものには後述の一般税率が必ず適用されます。
・米などの穀物とその調製品
・ミルク、クリームなどとその調整品
・ハムや牛肉缶詰などの食肉調製品
・たばこ、精製塩
・旅行用具、ハンドバッグなどの革製品
・ニット製衣類
・履物
・身辺用模造細貨類(卑金属製のものを除く)
②実行関税率
課税価格が20万円を超える場合、実行関税率が適用されます。
品目は10,000にものぼり、商品に最適なものを選ぶのには時間がかかります。したがって、実行関税率が適用される取引をする際には通関業者に業務を代行してもらうのが一般的です。
とはいえ業者に丸投げせず、自社の商品にどれだけの実行関税率がかかるのかは把握しておきたいところ。少々煩雑ですが、税関の公式サイトでチェックしてみてください。
関税のほかにかかる経費
上記の関税のほかにも、中国輸入では以下の経費が発生します。
通関手数料
通関にかかる手数料のことで、一律で200円/箱となっています。
中国輸出通関手数料
中国から商品を輸出するのにかかる手数料です。こちらも一律となっており、4元/箱が定められています。
消費税
モノやサービスの消費にかかる税金ですね。(商品代金+送料)×10%となっています。
中国輸入で関税がかからない方法がある!?
実は、仕入れ代金が1万円以下の場合、関税も消費税もかかりません。
それなら、毎回1万円以下になるように仕入れをすれば経費削減できるのか……というと、残念ながら不可能です。
実は、このケースは個人輸入限定で適用されるのです。よって販売目的で輸入する場合、関税をゼロにすることはできません。
中国輸入の関税で注意すべきこと
言うまでもありませんが、関税を安くしたからといって虚偽の申告を行うのはNGです。
税関に申告する際にはインボイス(仕入れ書)という書類を用意するのですが、そこに商品単価などを実際よりも安く記載する不正取引の方法があります。
これをアンダーバリューといい、一部の通関業者が行った結果、摘発されているのです。たとえば、販売する製品を見本用のサンプルとして虚偽申告するなど。
立派な脱税であり、刑事罰の対象になるため、絶対にやってはいけません。
もちろん自社では行わないにしても、通関業者を利用する際には信頼性を重点的にチェックしておきましょう。
関税で分からないことがあれば税関へ問い合わせを
ここまで中国輸入にまつわる関税の話をしてきましたが、実際にいくらかかるかの最終的な判断は、税関に委ねられています。
自社では◯円だと思っていても、税関の判断次第では金額が変わる可能性があるのです。
そもそも関税の仕組みや税率は非常に複雑で、年ごとに変更されることも。専門家でもない限り、詳細に把握しきるのは困難です。
よって、自社が取り扱いたい商品の関税について少しでも不明な点があれば、すぐ税関に問い合わせてみましょう。申告時にトラブルとなり商品の足止めをくらうと、顧客満足度は低下してしまいますので、前もって相談しておくのがおすすめです。
まとめ
今回は中国輸入にかかる関税について、仕組みや内訳、注意点などを解説してきました。
残念ながら、ビジネス目的での輸入では、関税がかからないケースはありません。正しく申告し、規定の金額を支払いましょう。
なお関税については、ミプロの「小口輸入と関税」などにも分かりやすくまとめられています。ぜひご覧になってみてください。