映像でありながら、極めてリアルな体験ができるVR。ゲームや音楽ライブ、映画などなど、さまざまなジャンルで導入されています。
そして、近年急速に成長しているEC業界にも、VRによる仮想現実の流れがきています。VRコマースと呼ばれ、家でも実店舗で買い物をしているかのような体験ができるのです。
そんなVRコマースについて、本記事ではその概要やメリット、課題、具体事例などを紹介していきます。
【VR×ECサイト】VRコマースとは?
「VRコマース」とは、オンラインショッピングにVRを活用する形態のこと。
仮想世界に再現された本物そっくりの店舗で、リアルなショッピング体験を自宅にいながら楽しめるとあって注目を集めています。
VRコマースの市場規模
リサーチ会社IDC Japanの調査によると、世界のAR/VRのハードウェア・ソフトウェア・関連サービスを合計した支出額と見通しは以下のとおり。
2018年:9,600億円
2019年:1.8兆円
↓
2023年:17兆3,000億円
年間の平均成長率は78.3%にもなるそうです。
さらに新型コロナ騒動も相まって、VRコマースは世界的に重要なトレンドとなっており、EC業界の中でもひときわ存在感を示すことが予想されます。
出典:IDC Japan/Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide 2018H2
【VR×ECサイト】VRコマースのメリット
次に、VRコマースのメリットを3つ紹介します。
実店舗でなくとも具体的な商品イメージを持ってもらえる
仮想のショップを作り出すため、VRコマースでは画像や文章、動画よりも詳細な情報を顧客へ提供できます。本来は実店舗でしかできなかった、店員による丁寧な接客も可能です。
これにより、従来のECサイトとは比べ物にならないほど具体的な商品イメージを持ってもらえます。「実際はどうなんだろう?」という顧客の疑問を払拭しやすくなり、購入率アップへつながるのです。
昨今では、家具や家電を自宅に配置したり、服を試着したりできるサービスも登場しています。
新たな購買体験を提供でき、SNSでの拡散などを期待できる
VRでは、本物さながらの環境を再現すると同時に、VRにしかできない演出も可能です。実店舗でも従来のECでもない、新たな購買体験を提供できるわけです。
自社のVRがSNSで拡散されるのも期待でき、現代人のライフスタイルとも相性が良いといえます。
ユーザーの行動を追いやすくなる
ユーザーの行動を追いやすくなるのもメリットです。
・ユーザーがどの情報に興味を持ったのか
・どの情報が購入の決め手になったのか
・どの要素で離脱したいのか
視覚や触覚などをトラッキングすることで、精度の高い分析を行えます。すると、より的確な施策を打てるようになり、購入率アップを目指せるのです。
【VR×ECサイト】VRコマースの具体事例
国内外では、すでにVRコマースの事例が数多く登場しています。どんなものがあるか、今回は3つ紹介しますね。
WHOLE FOODS MARKET
米フロリダ州を拠点としてVR制作を行う「LifeStyles in 360」は、同国の食料品小売りチェーン「ホールフーズマーケット」と提携。ホールフーズマーケットでVRショッピングができるサイトを2020年に立ち上げました。
360度カメラで撮影された3D画像により、ユーザーは店舗と同様のショッピングを来店不要で体験でき、時間をかけず即購入できる仕組みが整っています。
PARCO×VOYAGE Group
2017年、ファッションビルを展開する「PARCO」とIT企業「VOYAGE Group」が提携し、VRサイト「VR PARCO」を期間限定でオープンしました。
ユーザーはスマホやPCを使い、実際のPARCO店内を歩き回りながら気に入った商品を購入する体験が可能。
また、PARCOは2019年にVRのアート展示を開催し、1ヶ月で25,000人を動員。VR PARCOも含め、VRの実績を着実に積み重ねています。
IKEA VR Experience
家具量販店「IKEA」は、家具をバーチャル空間に配置し、実際のイメージを体験できる「IKEA VR Experience」をリリース。
購入前にシュミレーションをしてもらうことで商品のミスマッチを防止し、顧客満足度アップと返品率ダウンにつなげられます。
現状は欧米の家屋のみですが、日本家屋のレイアウトに期待したいところです。
まとめ
本記事ではVRコマースについて、その概要や市場規模、メリット、具体事例などを紹介してきました。
近年、消費者はブランドや商品そのものではなく、購買体験に重きを置くようになっています。オンラインでありながらオフラインの実店舗そっくりの体験ができるVRは、利便性の高さや面白さから、将来的にはスタンダードになるかもしれません。
開発の費用と手間、VR機器の普及といった課題もありますが、今後の動向は要チェックです。