Webや物流網の発達、そしてスマホの普及により、世界各国でECの利用が拡大しています。これを受けて、ECサイトを開設する事業者も同じく世界中で増加中です。
EC市場の成長度合いを測る基準として、市場規模のほかにEC化率があります。これは、全取引のうちECによるものが占める割合のこと。高いほどオンライン移行が進んでいるといえます。
では現状、世界のEC化率はどうなっているのか。本記事ではこの点について、市場規模の特に大きいアメリカ・中国と日本を比較しながら解説していきます。
世界のEC化率(BtoB)
まずは世界全体のBtoB EC市場規模とEC化率をみてみましょう。
2020年、世界のEC市場規模は440兆円でした。そのうち日本は19兆3,609億円。日本の20倍以上もの金額が動いているわけですね。
そして、世界のEC化率は同年で16.1%でした。日本は6.76%なので、世界に比べて低い水準となっています。
世界各国のEC化率~アメリカ~
2019年、アメリカのEC市場規模は63兆5,000億円、EC化率は11.0%でした。2020年にはEC市場規模が74兆2,000億円、EC化率が14.5%となりました。両方とも堅調に伸びています。
ただし、このEC化率は全体の平均であり、下図のとおり商材別に見るとかなり差があります。
画像:同上
書籍・音楽・ビデオが50%超え、PC・家電が40%弱と高い数値なのに対し、食料・飲料は2.7%、車・車用品は3.7%と相対的に非常に低い数値です。日常的に消費するものは近隣の小売店で買うでしょうし、車は実店舗でしっかり実物を吟味したいですよね。
アメリカのEC市場ではクリック・アンド・コレクトがトレンドに
画像:同上
クリック・アンド・コレクトとは、ECで注文した商品を実店舗で受け取る方式のこと。日本では浸透していませんが、アメリカやEU圏ではトレンドになっています。
アメリカにおけるクリック・アンド・コレクトの売上高は、2019年に3兆7,660億円だったのが、2020年には5兆3,300億円へ成長。2022年には19年の2倍以上となる、7兆7,220億円に達すると目されています。
クリック・アンド・コレクトのメリットは、配送時間の短縮と送料節約です。さらに、物流事情の悪い同国では、確実に商品を受け取ることができるとあって、クリック・アンド・コレクトを選ぶ消費者が増えています。
EC化が進むのと同時に、ECと実店舗の連携もまた進んでいるのです。
世界のEC化率~中国~
画像:同上
2020年、中国のEC市場規模は253兆円、EC化率は44.0%に達しました。どちらの数字も、アメリカの3倍以上にのぼります。今後の拡大予測も良好で、21年にはEC化率50%を超えるとのこと。
情報検閲のある中国では、マスメディアよりもインターネットの方が信頼される傾向にあります。また、品揃えの豊富さやリーズナブルさもあって、EC利用が世界で最も浸透しているのです。
同国の都市部と農村部では依然として経済格差が大きく、農村部の発展によりEC市場は今後ますます成長するでしょう。
中国のEC市場ではWeChatミニプログラムがカギに
中国では、SNS/チャットツールとしてWeChatが普及しています。月間アクティブユーザー数は10億人以上。
そんなWeChatには、ミニプログラムという機能があります。これはWeChat内で動作するサブアプリで、ネットショッピングをする際には他のサイトやアプリへ遷移することなく、WeChatだけで完結できる優れもの。
開発は簡単にでき、さらに情報の拡散性というSNSのメリットも活用できるため、ミニプログラムは中国におけるEC化を加速させました。
中国でEC事業を展開するのであれば、ミニプログラムは今や必須となっています。
世界のEC化率~日本~
画像:同上
2019年、日本のEC市場規模は19兆3,609億円、EC化率は6.76%でした。アメリカや中国に比べると、EC化率の低さが目立ちます。
商材別の数字は以下のとおり。
画像:同上
事務用品や家電、書籍などは30%を超えている一方、食品や化粧品は数%。食べたり肌に付けたりするものは、実際に商品を確認してからでないと不安なのだと考えられます。
もっとも、全体を見てもEC化率が世界平均より低いのも事実です。これをネガティブにとらえるのではなく伸びしろがあると考え、どんな課題を解決すればECを展開できるか検討してみましょう。
BtoBのEC化率はBtoBの数倍以上
画像:同上
国内のBtoB市場は、2019年に市場規模が352兆9,620億円(前年比2.5%増)、EC化率は31.7%となりました。もちろん業種によって差はありますが、BtoCよりもずっとEC化が進んでいるのです。
ただし、上記の数字には「EDI」と呼ばれる自動発注システムによるものも含まれており、このBtoB特有の売買形式の利用が年々増加している点は考慮すべきでしょう。
ただ、いずれにせよ取引のデジタル化が市場の成長に関わっていることに変わりはありません。
世界のEC化率~今後はスマホ対応が前提に~
画像:同上
EC化率アップとEC市場の活性化には、今後スマホ対応が前提となります。何なら「もうすでになっている」と言って良いぐらいです。
というのも、スマホでECを利用する人の割合は、今や全体の半数近くになっているからです。さらに、主に若い世代ではPCよりもスマホの所有率の方が高いことを考えると、今後EC利用のデバイスはスマホがマジョリティになるでしょう。
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まとめ
今回は世界のEC化率について、アメリカ・中国・日本を比べながら解説してきました。
新型コロナ騒動により、EC化は今後も世界中で加速するでしょう。ただ、その先の流れとして、オンラインからオフラインへの送客(O2O)や、オンラインとオフラインの統合(オムニチャネル)といった取り組みも進んでいます。
ECの未来にとって重要な項目ですので、ぜひ以下の記事もご覧いただければと思います。
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